真・MFC千夜一夜物語 第336話 MFCの健康診断 その5

2021年05月25日

マスフローコントローラー(MFC)やマスフローメーター(MFM)の健康診断はどこで受けるの?という質問に対して、そのまま装置に実装された状態で流量を測るという方法があります。

 特に半導体製造装置は真空チャンバーでの反応を行わせるものが多い為、この真空チャンバーを使ってMFCの流量制御性能の繰り返し性を検証することができる機能を備えた装置があります。
ビルドアップ方式と呼称された手法のことです。
MFCのセンサー管やバイパス(層流素子)部に異物がつまるとセンサーと層流素子の分流比が初期の出荷時の設定か変化してしまって、その結果、測定される値と実流量の間にズレが生じる事があります。(下図) 

こうした場合、MFCの流量信号(PV)を見ていては判断でず、といってMFCの流量制御バルブ駆動信号(MV)をモニターして判断しようとしても、閾値の設定が難しく、なかなか精度の高い判断ができないという状況で、装置のチャンバーを使ってビルドアップ法で流量を測定するという手法が考案されました。

ある真空度まで排気したチャンバーに対し、MFCから設定流量を流し、チャンバーが決まった真空度まで昇圧する時間を比較する方法です。
これと似通った手法は、MFCのコンバージョンファクターを測定する方法にも使われていて、下図に示すPVTt法(定積法)と言います。
装置で使用される際は、単に実ガスのみでその昇圧に要する時間を測定し、装置立ち上げ時のそれと現在の値を比較することが多いです。

しかしながら、装置搭載のビルドアップ法では絶対的な流量精度を求めることはできません。
あくまで繰り返し性能を検証するものであり、"MFCは流量測定を目的とした訳ではなく、朝であろうと夜であろうと、夏であろうと冬であろうと、繰り返し同じ流量を流してくれていたら良い"という繰り返し性能に重きを置くユーザーの運用思想と合致しているから用いられているのです。

その運用に限っても、問題が無かった訳ではありません。
チャンバーを使用してビルドアップを行うということは、プロセスを一旦止めてチャンバーをパージし、また排気しなくてはいけません。
つまりMFCの流量検定を行うために、わざわざ装置を止めなくてはならない訳で、「生産に追われるラインで、それを定期的にやるなんてとんでもない!」という意見が出てきたのです。

「それより実際にプロセス中のガス流しているMFC自身で健康診断ができないか?」という要求から、イン・サイチュ フロー ヴァリフィケーション(In-Situ Flowmeter Verification) なる言葉が流行りだしたのでした。(ちなみにin situ 語源はラテン語とDecoは聞いています。) 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan