真・MFC千夜一夜物語 第335話 MFCの健康診断 その4

2021年05月18日

マスフローコントローラー(MFC)やマスフローメーター(MFM)の健康診断はどこで受けるの?という題でお話をしています。
ユーザーが自社内の社内校正基準器を使用してMFCの流量が正しいかを測る際に「校正基準器とMFCをどう接続したらいいのですか?」という質問を頂く事があります。
具体的には「MFCを基準器の上流に置くべきなの?それとも下流に置くべきのの?」という意味です。

本来はその基準器のメーカーの説明すべき内容なのですが、基準器を導入して時間が経過してしまい、「半年に一度MFCを社内基準器で流量チェックする。」という文章だけが残って、そのメソッドが欠落しているといった事態はよくあります。

これは校正器の搭載している流量センサー(流量計)の特性に左右されるのが前提です。

理想的なのは、MFCの上流に基準器を置くレイアウトです。

本図では被校正機器がMFCのパターン(上)とMFM(下)のパターンを記載しています。
基準器の構成がMFCのような流量を発生させるタイプではなく、あくまで流量計、MFM的な流量を測定用途の物と仮定した場合、被校正MFCの上流に置いて、MFC側で流量制御を行い、その実流量を基準器で測定します。被校正機器がMFMの場合は、基準器の下流に定流量弁を置きここで基準流量を作り出すことで、被校正MFMの流量出力との比較を行います。
図中、こちらの基準器の絵がフロート式流量計なのは、特に意味はありません。

「基準器はMFCの下流につなぐのではないの?」と不思議に思う方もおられるでしょうね?
これには理由がありまして、被校正機器の下流に接続する場合、下流の状態が大気開放ならばよいが、例えば真空チャンバーに繋がれている場合、真空下で正確に測定ができない基準器も存在するからなのです。
また、MFC自身も二次側に圧力損失が増加して、背圧が上がった状態では、流量制御ができないモデルも存在しています。
基準器の流量測定原理が臨界ノズルタイプやコリオリ式のように差圧を必要とする機器の場合に顕著な問題です。

更に怖いのは基準器の汚染です。
健康診断が必要と思われるMFCは、なんらかの不具合を起している可能性もあり、それが配管内の異物、パーティクルによる影響であった場合や、流体の液化によるものであった場合、二次側に接続した基準器に、MFCに堆積したそれらの異物が流れ込む可能性があります。
それにより基準器に悪影響が出てしまっては、元も子もありません。
特に基準器が高額な校正用高性能機器であった場合、上司や基準器を管理している部署に思いっきり怒られてしまいます。

基準器をMFCの上流に置く場合にも留意すべき点があります。
例えばフロート式流量計(面積式流量計)を用いる場合、流量計自体の製造時の校正条件を再確認しなくてはいけません。
フロート式流量計の目盛には2種類あって、大気圧目盛という、流量計の出口側が大気に放出されていて、テーパ管内部に圧力がかからない場合と、負荷圧目盛という流量計の出口側にバルブ等が付いていて、テーパ管内部に圧力がかかる条件がある場合です。

これらは発注時に仕様として決めて製造されているので、そこを見落としたまま使用した場合、当然流量値は正確なものにはなりません。
繰り返し性を評価する目的であったとしても、例えば古くから使用していた流量計は負荷圧目盛であったのに、新しく購入した流量計が大気圧目盛であったというような手違いがあった場合に問題が生じてしまいます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan