真・MFC千夜一夜物語 第426話 MFCの歴史を振り返ろう その2

2024年03月12日

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っていきたいと思います。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

ピトー管式風速計に対して熱線式流速計の原理は上図にあるように、キングの式を基にして熱線からの放熱量と風速のバランスから流速を導き出しています。
熱線式流量計は高いSN比と応答性能を特長としています。
熱線部に細径の白金線等を使い、それを流れ場に金属の支柱で曝し、細線に電流を流すと発熱が生じます。
加熱された金属線は流体の速度が上がれば上がるほど、冷却されますね?
金属は高温となると抵抗値が大きくなる傾向があるので、流速の変化に応じて生じる抵抗値の変化を捉えれば流速を測ることが可能になるのです。
熱線式というネーミングは、この金属の細線を発熱させることから来ています。
抵抗値が変化したら、その分電流量を変化させる方式です。

これに対して現在の熱線式風速計では熱線の温度を常に一定にする=金属線の抵抗値を一定に保つ定温度方式が主流となっています。
回路上は複雑になりますが、フィードバック制御のおかげで応答性能が向上する利点が大きいからです。
この定温度型熱線式流速計の基本回路は下図のような構成です。

熱線はホイットストンブリッジの抵抗としてバランスをとっている為、ブリッジに加える電流量を変化させることで、常に一定温度に熱線を維持するフィードバック回路となります。
熱線式流速計は流れ場の物性値が一定ならば正しい流速値を示します。
逆に流速が一定ならば物性値の変化を示す事も可能な流速計です。
その為、周囲温度変化には当然左右されてしまいます。
この問題には温度補償回路を設けることで対応が可能になりました。
ブリッジ回路に温度補償用の測温抵抗体を追加することで、流体の温度変化によって生じる抵抗値変化を用いた温度補償を行っているのです。

熱線式風速計はその性格上、ブリッジ回路から出力される電圧信号と流速の関係は絶対的なものではなく、あくまで相対的なものです。
従って必ず校正が必要になります。
ピトー管等の流体の物性値に左右されない測定式を利用した流速計をリファレンスとして検量線を引いて運用されることになります。
今まで解説してきたMFCの熱式流量センサーと類似性があることに気づかれましでしょうか?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan